2010年1月23日土曜日

ブライエス湖とプラトーピアッツァハイキング


ドロミテの滞在先のお勧めにホッホ・プスタータール(イタリア語ではアルタ・プステリア)のセストの谷、サン・カンディド、ドビアッコを紹介したので、ホッホ・プスタータールのお勧めハイキングコースを紹介します。まずはブライエス湖一周のハイキングです。ドロミテには沢山の湖がありますが、ベスト3を選ぶとすればミズリーナ湖、ブライエス湖、カレッツァ湖ではないでしょうか。(車でアクセスできる、知名度も高いものとして)ブライエス湖はクローダ・デル・ベッコ(ドイツ語名ゼーコーフェル)を映す美しい湖です。サン・カンディドからドビアッコを経由してブライエス湖まで行く路線バスもあります。湖一周はサッサと歩けば一時間程です。いつも左回りに歩いています。途中少々急な上り下りがありますが、そこさえこえられれば誰でも歩けます。そこでちょっと無理となれば引き返せば良いので左回りがお勧めです。(右回りだとそのアップダウンまで遠いので)


ドロミテにはエーデルワイスが咲いている所が沢山ありますが、山岳ガイドによれば、エーデルワイスより珍しいというラ・プンツェルがこの湖のハイキングコースに咲いているのを見つけました。ラ・プンツェルは岩の裂け目のような所に咲くそうで、岩登りをしていると見かけることがあるとか。ブライエス湖一周コースのアップダウンの辺りの岩場を見て下さい。もしかしたら見つかるかもしれません。ラズベリーの実(7月位?)やブルーベリーの実(8月位?)を食べながら歩くのも楽しいです。



さてブライエス湖から幹線道路へ戻る手前にプラトーピアッツァ(ドイツ語名プレッツヴィーゼ)への分岐があります。この分岐でバスを乗り換えるとポンティチェロ(ドイツ語名ブリュッケレ)を経由しプラトーピアッツァへと路線バスで行くことができます。プラトーピアッツァへの路線バスは7月にならないと運行しないようですから、6月ならタクシーを頼むことになります。ポンティチェロからは有料道路となっていて、台数制限があり、プラトーピアッツァの駐車場が一杯になったらポンティチェロの駐車場に車を置いて路線バスで上がることになります。有料道路は徴収人がいない時間は無料だそうで、たしか午前7時だったと思いますがそれ以前なら無料で上がれます。というのもこのプラトーピアッツァ(約2000m)からとても整備されたハイキングコースを歩いてデュレンシュタイン(2839m)まで登ると朝日の絶好ポイントなのです。クローダ・ロッサとクリスタッロ山はもちろんトレ・チーメ、遠くにはペルモ山やチヴェッタ山までも望めます。また東に目を転じるとドロミテの山ではなくオーストリア最高峰グロースグロックナーをはじめとしたオーストリアアルプスまでが見渡せます。もう少し早起きすればよかったです。途中で日が昇ってしまいました。それでも充分美しかったです。プラトーピアッツァからデュレンシュタインまでは2時間半程かかります。山頂手前に鎖の道がほんの少しあります。帰りも同じ道です。


850mも登れないという方も多いと思いますが、登れなくともプラトーピアッツァでは楽しむことができます。プラトーピアッツァからデュレンシュタイン小屋までのハイキングです。プラトーピアッツァで一番に目をひく山がクローダロッサです。鉄分を多く含んだ赤い色が特徴的です。イタリア語のクローダロッサ(3146m)のロッサは赤という意味です。ドイツ語では全く赤に関係なくホーエガイズルと呼ばれています。この山を右手に見ながら車も走れる(許可車)整備されたほぼ平らな道をまっすぐ歩きます。30-40分程でデュレンシュタイン小屋に到着します。ここからはクリスタロ山群の美しい姿をご覧ください。プラトーピアッツァは牧草地になっていて、緑の中をとても気持ち良く歩くことができます。トレ・チーメのハイキングでは荒涼とした岩の中を歩き、ここではのんびりした牧草地散歩を楽しんで下さい。ここから同じ道を引き返してもよいですし、もう少し元気があればほぼ来た道と並行して走る少々上の道がありますのでお勧めします。また400m位なら登れるという方はデュレンシュタイン小屋から更にシュトルデルコプフ2307mまで上がっても良いでしょう。ここにはエーデルワイスが沢山咲いているそうです。(私は探せませんでしたが、企画している滞在旅にご参加の方々が沢山撮影されています)ここからはトレ・チーメが見えます。

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2010年1月20日水曜日

ドロミテを旅する

2009年にユネスコの世界遺産に登録されたドロミテはイタリア北部、トレンティーノ・アルトアディジェ州、ヴェネト州そしてフリウリ・ヴェネチア・ジュリア州、3つの州にまたがる141,903ヘクタールの領域で3000mを超える山が18あるそうです。そして最高に美しい山の景観を持つ地域とされています。ヨーロッパアルプスには4000mを超す山並みに氷河がある素晴らしい所がありますが、ドロミテは標高こそ最高峰マルモラーダで3342mと低いもののその景観は他にないといえます。スイスもフランスもオーストリアのアルプスも素晴らしいのですが、何故かドロミテにひかれてしまいます。時間があればドロミテに足が向いてしまうのです。日本の山に行ったことのない私がこんなにハイキングをするようになり、滞在の旅を企画することになったのはドロミテのお陰なのです。

さてドロミテを旅するには・・・。是非とも滞在型の旅をお勧めします。できたら一週間、少なくとも5日間は一か所に滞在して頂きたいです。アルプスの旅は天気に左右されますから、予備日をもつ余裕が欲しいですね。滞在旅をお勧めする訳はこちらをご覧ください。ブレンナー峠を越えると太陽の国イタリア、峠を越えると太陽が燦々と輝いていたというようなことを書いている方もいますが、確かにドロミテはアルプスの北側より天気の日が多いような気がします。ドロミテはまさにオーストリアからブレンナー峠を越えた南なのです。

滞在地のお勧めはいくつかありますが、ドロミテで一番有名なリゾートといえばオリンピックも開かれたコルチナ・ダンペッツォです。クリスタロ山、トファーネ山などに囲まれたまさにドロミテの中心地といえます。お洒落な高級ブティックも軒を連ねます。以前ここに滞在する旅の企画をしたいなと思い小さなホテルの部屋をいくつも見せてもらったことがありますが、私の感覚では値段と折り合わず断念しました。多分コルチナ・ダンペッツォのホテル代は他と比べ少々高くなることを覚悟する必要があります。

値段が良心的でホスピタリティーを感じさせる地域が南チロルです。企画している旅もこの南チロルのホテルに滞在するものです。南チロル(ドイツ語でスードチロル)とはイタリアのトレンティーノ・アルトアディジェ州の北半分アルトアディジェのことです。南チロルは第一次世界大戦前までオーストリア帝国領でしたが、大戦後イタリア領になった所です。チロルという言葉もメラーノ(現在はイタリアの南チロルにある温泉保養地)近くにあったチローロ城という城の名前が語源だそうです。現在はオーストリアにチロル州があり(インスブルックが州都)、イタリアに南チロルがあり、チロル州の飛び地、東チロル(大戦後に南チロルがイタリア領になったので、南チロルの東の部分がチロルの飛び地となってしまった)と3つのチロルがあります。南チロルだけがイタリア領となった訳ですが、住んでいた人はドイツ語を母国語とする人々だったのです。戦後南チロルをイタリア語化するような政策がとられ、イタリア語を強制したり、南からイタリア語を話すイタリア人を移住させたそうです。イタリア領内の南チロルでドイツ語を母国語とする方々がドイツ語を使う権利を得たのはごく最近のことだそうです。アルトアディジェの中心都市ボルツァーノ(ドイツ語名ボーツェン)等に行くと南チロルではありますが、イタリア語が大分聞こえてきます。それに比べ南チロルでもセストの谷等ではほぼドイツ語、まるでオーストリアのチロルにいるのと変わらない程です。

オーストリアでは他のアルプスの国より、良心的な値段で宿泊できるように感じます。南チロルはイタリア領ですが、ホテルのシステムや料金がオーストリアのチロルに近く、農家の民宿からホテルまでどこに行っても清潔で居心地が良いです。一番のお勧めはセストの谷です。セストの時計山というドロミテの山々が見える牧歌的な所で、セストとモースという二つの集落があります。どちらにもスーパーマーケットやスポーツショップ、レストランもそろっていますが、コルチナ・ダンペッツォのような都会的なリゾートではありません。どちらかといえばショッピングより山や自然が好きな方に是非滞在して頂きたいアルプスの小さな村です。セストの谷はドロミテの中でも一番北東に位置していて、オーストリアの国境に近い所です。

セストの谷への入り口、サン・カンディド(ドイツ語名イニヒェン)とドビアッコ(ドイツ語名トブラッハ)も滞在適地といえます。お気に入りはセストの谷ですが、交通の便が良いのはサン・カンディドやドビアッコです。トレチーメやブライエス湖等へのバスはサン・カンディドから出発となるからです。セストに滞在すると一旦、7Km程離れたサン・カンディドまでバスで出て乗り換えが必要です。レンタカーやタクシーを使って移動するならまったく問題はありませんが、公共の交通機関で移動となるとサン・カンディドが便利です。サン・カンディドにはドロミテの山であるハウノルド山がそびえています。ドビアッコはミズリーナ湖やコルチナ・ダンッペッツォへの北の入り口に位置する所です。ミズリーナ湖へも20Km程です。位置関係はホッホ・プスタータール(この地域全体をさすドイツ語名)のオフィフィシャルサイトhttp://www.hochpustertal.info/index.php?id=1557&L=1のHow to find usをご覧ください。このサイトから直接この地域の宿泊施設の予約をすることができます。南チロルやオーストリアのアルプスリゾートの多くがこのようなオフィシャルサイトを持っていて、ホテルから農家民宿まで様々なタイプの宿泊施設が紹介されています。アルプスの宿泊施設に関しては今後色々紹介していきたいと思います。

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ハイキングの地図


ヨーロッパアルプスのハイキングコースにはとてもわかりやすい標識が出ていますのでハイキング地図を見ながら歩くことができます。ハイキング地図は1:25,000のものが良いです。所によっては1:50,000のものしかない場合もありますが、できるだけ詳しい地図を求めたいものです。ドロミテ地域の地図もいくつかの会社のものが出ていますが、私はKOMPASS社のものが気に入っています。日本では山に行ったことが全くない山の素人の私が、この地図を見て歩けるのですからびっくりです。


ドロミテには沢山のハイキングコースがありどこを歩いたら良いか迷ってしまいます。そんな時に参考にしているのが同じくKOMPASS社から出ているWanderfuehrer(ハイキングガイド)です。ドイツ語で書かれたものですが、簡単なコースは青、中位は赤、難しいコースは黒と色分けされています。私は素人なので赤のコースまでしか歩きませんが、赤コースでも鎖のついた急な岩場等もありますので、通常のハイキングならこの赤コースまでで十分と思います。このブログではこのハイキングガイドを参考にして歩いた様々なコースを紹介したいと思っています。

トレチーメ・ディ・ラヴァレードのハイキング


ドロミテのハイキングで何をおいても一番に行きたいのがトレ・チーメ・ディ・ラヴァレードのハイキングでしょう。トレ・チーメとは3つの頂という意味のイタリア語です。ドイツ語ではドライ・チンネンと呼ばれています。また後に詳しく書きたいと思いますが、ドロミテにはドイツ語を話す人々の暮らす南チロルという地域があります。それ故、山、湖、谷や村の名前がイタリア語、ドイツ語と2つあるので複雑です。アルタ・バディア(ドロミテの領域にあり南チロルに属する)では更にラディーニッシュというロマンシュ語が話されている為、村の看板はロマンシュ語、ドイツ語、イタリア語3ヶ国語で書かれていて益々複雑です。

さてトレ・チーメのハイキングの出発地アウロンゾ小屋まではドロミテ一有名なミズリーナ湖から有料道路を上がってゆきます。路線バスはコルチナ・ダンペッツォからも、サン・カンディド(イニヒェン)からも出ています。有料道路はカディーニ山群と第一次世界大戦の舞台となったモンテ・ピアーナの間を行きます。駐車場に着いたらそこにある一番近くの山がトレ・チーメです。3つの頂が見えないので、トレ・チーメはどれですかと聞かれることがありますので念の為。まずはトレ・チーメとは反対、今上がってきた道方向の素晴らしい景色を見て下さい。クローダ・ロッサ(鉄分を含んだ赤い山)、クリスタロ山群、ソラピス山群、カディーニ山群等が見えます。ミズリーナ湖も小さく見えますよ。

駐車場からアウロンゾ小屋までは少々登りですが、そこからまず最初の目的地ラヴァレード小屋までは良く整備された、子供からお年寄りまで誰でもが歩けるほぼ平らな道です。左手に聳えるトレ・チーメ、右手には遠くアウロンゾの湖が見えます。この道には恐竜の足跡化石のある岩もあります。途中小さな礼拝堂を通り過ぎラヴァレード小屋の近くに来るとトレ・チーメの切り立った岩に登っているロック・クライマーの姿が良く見られます。ロック・クライミングをするなら是非この人達にガイドしてもらいましょう。途中後ろを振り返るのも忘れないで下さい。カディーニ山群がとても美しいのです。ラヴァレード小屋では12時にレストランサービスが始まります。12時前はバールのサービスのみです。ここまではゆっくり歩いても1時間はかかりません。


トレ・チーメの3つの頂が見える所(パテルンサテル)まで行くにはラヴァレード小屋から少々(標高差100m程)登りの道です。ラヴァレード小屋の手前を左手に登ってゆく人が見えますが、こちらは少々きつい登りなので、自信のない方はラヴァレード小屋を通り越して道なりに登ります。パテルンサテルからのトレ・チーメの姿は大変素晴らしいので(上の写真)あまり足に自信がない方でも是非ここまでは歩いて下さい。

さてここからトレ・チーメを一周するハイキングが一番人気のあるコースの様です。パテルンサテルから赤い屋根のドライ・チンネン小屋が遠くに見え、それを目指して歩き、そこから105番の道を歩くものです。しかしこの一周コースは105番の道に入ると急激に道を下って行き、下った分と同じ位また登らなければなりません。2時間近く歩いた後に登りとなるので、疲れきって歩くのが嫌になった外国の方を見かけたこともあります。そこで山岳ガイドのお勧めは、パテルンサテルからドライ・チンネン小屋へ向かって歩くと左手に標識もない道ではあるが105番へ続く道です。小さな湖と営業はしていない山小屋の方向です。ドライ・チンネン小屋を回らない分大分近道ができますし、アップダウンが少なく済みます。しかしこの道には営業している山小屋がないので水や食料は持参するか、ラヴァレード小屋で調達する必要があります。105番の道は出発したアウロンゾ小屋近くの駐車場まで続きますが、最後に少々道が細く歩きずらい所もあるので注意が必要です。


トレ・チーメの一周コースは天気の良い日は沢山のハイカーが訪れます。あまり人がいない方が好きという方へのお勧め(景色も素晴らしい!!)はブレレヨッホ小屋へのハイキングです(健脚向き)。パテルンサテルでトレ・チーメの雄姿を見たら、1104番のコースへ。途中まではラヴァレード小屋へ戻る道ですが、ラヴァレード湖を通りトレ・チーメとは反対方向です。急ではありませんが登りが少々長いのですが人は少なく素晴らしいコースです。ブレレヨッホ小屋は小さいですがとても素敵な小屋です。山小屋に泊まってみたいなら是非ここがお勧めとは山岳ガイドの弁。この小屋に宿泊する個人旅行の手配をさせてもらったこともあります。この小屋まで来たらチーマ・ウナの手前まで行ってみて下さい。セストの谷が見えます。この辺りは山に抱かれているという気持ちにされる所です。

ブレレヨッホ小屋からは101番のコースをドライ・チンネン小屋まで歩きます。ドライ・チンネン小屋からはアップダウンのある105番を通って、トレ・チーメを一周してもよいし、101番を通ってパテルンサテルへ戻っても良いでしょう。

コルチナ・ダンペッツォに宿をとっている場合には出発点のアウロンゾ小屋に戻らなければなりませんが、セストの谷やサン・カンディド、ドビアッコに宿がある場合は出発点に戻らず、セストの谷方向へ行くこともできます。ブレレヨッホ小屋からなら101番をドライ・チンネン小屋とは反対方向、ツィグムンディ小屋まで行き、103番をタールシュルース(谷の終わり)小屋まで歩きます。標高差1000m程の下りです。またドライ・チンネン小屋からなら102番をタールシュルース小屋へ。タールシュルース小屋から路線バスの停留所があるカンポ・フィスカリーノまでは乗合馬車もありますしもちろん歩くことも可能です。セストの谷に滞在する旅を2003年から企画していますが、毎回歩きたい方にはアウロンゾ小屋からラヴァレード小屋、パテルンンサテルからドライ・チンネン小屋、更にタールシュルースヒュッテからカンポ・フィスカリーノまで歩いて頂いています。更にカンポフィスカリーノから滞在ホテル、セストの谷のモース村まで歩いた方もいらっしゃいます。ドロミテの宿泊場所についてはまた後述しますが、私のお気に入りはセストの谷です。セストの谷に滞在する旅の企画についてはホームページをご覧ください。
http://www.asanorumi.com/2009kikakusesto.html

参考ハイキング地図:KOMPASS社617(Cortina d'Ampezzo)もしくは625(Sextner Dolomiten)